読んだ。

さよなら渓谷 (新潮文庫)
さよなら渓谷 (新潮文庫)
クチコミを見る

きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、 15年前の"ある事件"。長い歳月を経て、"被害者"と"加害者"を結びつけた残酷すぎる真実とは――。『悪人』を超える純度で、人の心に潜む「業」に迫った長編小説。

吉田修一、奥田英朗、角田光代(今をときめく3人!)が書く、現代ミステリって本当すごく恐くて、奥田さんだったら「邪魔」、角田さんだったら「森に眠る魚」が特に好きなのですが、この「さよなら渓谷」もあらすじを見てすぐに飛びついてしまいました。

結論からいうと、先に挙げた2つの本や、吉田さんで言うと「パレード」ほどは面白くなかったかも。ラストの展開が読めるのがちょっと早かったかな。なので、ストーリーの結末というか、あらすじで言う所の“残酷すぎる真実”に期待しすぎると、ガッカリしてしまうかもしれません。

ただ、主人公の若夫婦の隣人であり、物語の発端となる事件を起こす女の描写がすごく良かった。自分の子供が死んでしまって、最初は「悲劇の母親」と世間に思われていたのに、疑わしい部分が次々出てきて徐々に「容疑者」として見られていくのですが、私が普段テレビのニュースを見ていて感じる事がとても良く表現されていたと思う。

マスコミに叩かれ、毎日毎日家の前には報道陣がつめかけ、近隣住民にも「自分の子を殺したアバズレ」として好奇の目で見られている。そんな、考えるだけでうんざりする様な状況にあって、女の服装や化粧がどんどん派手になり、美しさが増していき、マスコミに敵意を現しながらも「どこか嬉しそう」であるということ。

よく、テレビのニュース(特にワイドショー)で、殺人事件発生後にインタビューした近所の人(もしくは被害者の家族とか)が実は犯人で、いけしゃあしゃあと事件について話しているVTRが逮捕後に流れる事がありますが、私はそれを食い入る様に見てしまうことがあります。文字にすると、稚拙に感じてしまうけど、悪のオーラみたいなものが体からにじみ出ていて、それに思わず引き付けられてしまうのだと思う。(もちろんそれは全く素敵な事では無い)

そういう点で、バッシングとはいえマスコミに注目され、カメラを向けられ、注目を集めている事で活き活きとしてしまっている女の哀しさが、私がこの小説で一番恐いと感じた所です。