推敲しない言葉

本・映画・音楽の、推敲しないそのままの記録。

2011年10月

モテキ

観た。

「モテキ」
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三十路前のモテない男・藤本幸世が、ある日突然、モテはじめたことから起こる騒動を描き、2010年にはTVドラマ化もされた人気コミックを実写映画化。主演はドラマ版に続き森山未來。ドラマ版から1年後を舞台に、原作者・久保ミツロウによるオリジナルストーリーが展開される。派遣社員を卒業し、ニュースサイトのライターとして正社員になった幸世に、ある日突然「第2のモテキ」が到来。新たに目の前に現れた女性たちと過去の女性たちとの間で揺れ動く幸世は……。幸世を取り巻く新たなヒロインたちを演じるのは長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子。監督はドラマ版の演出も手がけた大根仁。


まず、「私とモテキ」について。

・コミックは全部読んだ。
・ドラマは全部観てない。
・「モテキ」に出てくる、女性キャラはみんな好き。
・藤本幸世が嫌い。(森山未來くんはいいと思う)

で、感想なんですが、【面白い/面白くない】で言えば、今年観た映画の自分ベスト10に入るくらいには面白かったです。面白かったです。面白かったんですけど、やっぱり藤本が嫌いすぎて、むしゃくしゃしました。あまりにもむしゃくしゃしたので、これ映画観ていない人にはあまり分からないブログとなります。

そもそも、てめーモテてるわけじゃねーだろっ!! っていうね。大前提があるんです。モテるってなんだろうってしみじみ考えてしまいましたもの。あれって、モテてるわけじゃなくて、偶然に幸運に超タイプの女性と出会って、でその友達に好きになられちゃったってだけで、モテてるわけじゃないですよね。(何度言うのか)

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モテてるっていうのは、金子ノブアキさん演じるダイスケみたいな男のことだろ!

劇中に「この子俺のサブカルトーク全部打ち返してくるよ、スペックたけえー!」ってセリフがあるんですけど、それって完全にみゆきちゃん(長澤まさみちゃん神)がカワイイ前提なわけで、可愛くて自分と趣味があえばそりゃ最高でしょうけど、結局、幸世の判断基準が可愛いか可愛くないかって所しか見てない気がするんです。

可愛い子が好きなのはみんなそうだろうし、全然問題は無いんだけど、それをやれ「自分と趣味があうから好き」みたいに言ってんじゃねーよと言いたい。あと、「サエない草食系男子」ってよりただのヤなやつじゃん! 大前提として、これで31歳は幼すぎる!

そして、幸世がそんなにサブカルが好きとは思えないっていうか、全部カッコイイものをつまみ食いしてる感じに思えちゃいました。あ、でもそういうのが“サブカル”ってことなのだろうか。ベッドサイドに「ジャングル黒べえ」もあった。
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「ナタリー」創設者の墨さんのセリフは、爆笑。

映画の中で、みゆきとるみこのキャラクターってすごく対照的なんだけど、それが幸世の部屋に泊まった時に描写にすごく出ていて、そこもうまいなーって思いました。みゆきの小悪魔ぶりと、るみこのはしゃぎぶりの違いは背筋ゾっとなりましたもの。かっこ悪すぎる幸世の「セックスごっこ」のくだりの後のみゆきのセリフはすごかったなぁ。

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「とってつけたように登場させすぎ」と不評な仲ちゃん演じる、ガールズバーの愛ちゃん。私は愛ちゃんと幸世のくだり好きです。彼女ってすごい女優さんだなって心の底から思いましたよ。真木よう子さんはドラマ版「モテキ」の林田要素を引き受けたって感じ。というかそういうお姉様キャラがいないと、仕事もろくに手がつかない幸世ってどうなのよ!(悪口再燃)

映画「モテキ」の大きな魅力の一つは音楽ですが、選曲すごく良かったです。新旧入り混じった名曲ぞろいで、思わずカラオケに行きたくなっちゃいました。最初と終わりに「物語はちと?不安定」を持ってくるのとか、超いいですよね。泣ける。



ただ、岡村ちゃんの使い方についてはやや不満ありです。「カルアミルク」ってそういう曲じゃなくない!? 「ロングシュート」も、いつ聞いてもテンションが上がる名曲中の名曲だからこそ、単に「がんばるぞー!」みたいなシーンに使ってしまうのはもったいなかった様に思います。

と、色々不満ばかりが多くなってしまった気がしますが、映画として本当に面白かったです。「邦画はあんま観ないから」っていう人も1000円のサービスデイとかに気軽な感じで観にいったらすごく楽しめると思います。だって、映画にこんなに感情的になってしまうんですから、森山くんはじめ皆さんの演技が素晴らしいんです。

※ライムスター宇多丸さんの「シネマハスラー」、「モテキ」評が例のごとくすごく面白かったです。ただ、るみこの“立ち直り描写”に関しては私は映画にちょっと共感できます。

ザ・ウォード 監禁病棟

観た。

「ザ・ウォード 監禁病棟」
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鬼才ジョン・カーペンターが「ゴースト・オブ・マーズ」(2001)以来、約10年ぶりに長編劇場映画のメガホンをとったサイコホラー。20歳の少女クリステンは、身に覚えのない放火の罪で精神病院に収容されてしまう。病棟には精神状態に問題を抱えた同年代の少女ばかりが隔離されており、クリステンは彼女らとは違うと自負していたが、担当医との面接で自分の名前以外の一切の記憶を失っていることに気づく。さらにその夜、廊下を歩く奇妙な女性を目撃したことから事態はさらに混迷していき……。


ホラー映画の巨匠、ジョン・カーペンター大先生の新作。「ハロウィン」、そして「遊星からの物体X」のジョン・カーペンターです。感想はというと、一緒に観た方(ホラー好き)の「……おじいちゃん“俺もまだ映画撮れるぞ”って頑張っちゃったんだろうねww」という一言に集約されていると思います。

全然つまんないとかじゃないんだけど、あまりにもホラー映画の“ベタ”だらけだったもので。ホラーにありがちなフラグがたちまくり、そしてすべて観客の思うとおり回収されていくという。スロットを打ったら全部自分の思うと通りマークが3つ揃う揃う! キモチーんだけど、あれ…これって楽しいんだっけ?みたいな。あ、私ギャンブルしないのでこの例えはテケトーですが。

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記憶喪失の金髪美女が連れてこられたのは、いわくありげな精神病棟。先客もすべて少女ばかり。って、これ「エンジェルウォーズ」じゃんって思いましたけどね。そして設定だけじゃなく、話の展開も結構似てるんですよ。

主人公クリステンは、気付いたら燃え盛る民家の前にいて、それが自分の犯行だということで警察に連れていかれ、精神病棟に入れられる。この病院どうも怪しい。違法な治療も行われていそうだ。オマケに何かでるんです…。ってうことで、クリステンは一生懸命病尾印を脱走しようとする。そこで、まーおこるおこるホラー的ベタな驚かし展開の数々!

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しかもその結末は「そうだと見せかけて違うんかと思ってたけど、やっぱりそうなんかい!」というこれまたベタすぎるオチなので、ホラーの新しい表現を見たいとか、真の意味で驚きたい方には退屈な映画だと思います。でも私は悪い印象無くて、ホラー映画のクラシックなお手本を観れたという点で満足しつつ、次回作にもゆるーく期待したいと思っています。

蛍火の杜へ

観た。感想遅れ。

「蛍火の杜へ」
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「夏目友人帳」で知られる漫画家・緑川ゆきの同名コミックをアニメーション映画化。夏休みに祖父の家に遊びにきていた少女・蛍は、妖怪たちが住むといわれる「山神の森」で迷子になってしまう。途方に暮れる蛍の前にキツネの面を被った少年ギンが現れ、ギンに助けられた蛍は、毎年夏にギンのもとを訪れるようになる。いつしか2人はひかれ合っていくが、ギンは人でも妖怪でもなく、触れると消えてしまうという不思議な存在だった……。大森貴弘監督ら「夏目友人帳」のアニメ版を手がけたスタッフが集う。

今回のブログは、「夏目友人帳」好きな人にむけて書きます。「夏目友人帳」好きじゃない(知らない)人は面白くないと思います。っていうかいつも別に面白いって思われたくてブログ書いてるわけじゃないしー。でも、つまんないよりは面白いほうがいいよね(夜のテンション)

「夏目友人帳」って、すごくいいじゃないですか。すごくいいよね、あのアニメ。漫画は未読なんですけど、全巻読破したいと思ってるし、「面白い!」とか「ちょっと泣ける」とかいう絶対評価以上に、すごくいいアニメだと思う。もう雰囲気とか全部好き。

で、私と同じ様に夏目が好きだったら、この映画楽しめると思う。そして、夏目を知らなかったら、楽しめるのか客観的には分からないんですよ。

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ストーリーは夏目本体とは全然絡んでいなくて、そういう点では夏目を知らなくても全く問題ナシ。この映画を観たタイミングが個人的にとあるタイミングだったっていうのもあって、この美麗なアニメーションと音楽に癒されまくり、別にまだ全然ストーリーは進んでないのに涙腺崩壊、という終始“ファン”のテンションで鑑賞しました。

緑川ゆき先生、そして大森監督。なんでこんなに繊細な物語を紡げるのですか!

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主人公のひとり、ギン。お面をとった顔は、港カヲルくん似の美少年ですが、そういったビジュアル面を差し引いても、めちゃくちゃいい男。今、私が二次元の中だったら2番目に好き(1番目は「よんでますよアザゼルさん」の芥辺さん)。声優さんの声もあっていてすごくよかった。

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無邪気な少女と、ギンとの出会い、仲良くなっていく過程、田舎の夏の風景など奇をてらった展開は無くてベタ過ぎるほどベタですが、そのベタが疲れた心と体にすっとしみこんで。使いまわされた言葉じゃなくて本心で癒されました。

と絶賛してますが、同じく夏目ファンで一緒に映画を観た友人は「よかったけど、ちょっと物足りない…。」と言っていたので、期待しすぎずに観るのが一番良いと思います! というか、普通にDVDで観るでいいと思う。スクリーンで観ねば!って感じではないので、DVDでぜひ観て欲しい一作です。

ミッション:8ミニッツ

本公開は10月28日、一足お先にブロガー試写会で「ミッション:8ミニッツ」を鑑賞してきました。

ミッション:8ミニッツ
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(C)2011 Summit Entertainment, LLC. All rights reserved.

シカゴで乗客全てが死亡する列車爆破事件が発生。犯人捜索のため政府が遂行する極秘ミッションに、米軍エリートのスティーブンスが選ばれる。事故犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込み、その人物になりすまして犯人を見つけ出すという作戦で、必ず8分後には爆破が起こり元の自分に戻るスティーブンスは、何度も「死」を体験するうちに次第に作戦への疑惑を抱きはじめる。


監督は「月に囚われた男」のダンカン・ジョーンズ。2作目だそうです。シリアスな作品ですが、個人的にジェイク・ギレンホールが好きなので、「男前映画」としてもちょっと期待していました。ジェイクって昔は、文系の極みっていう役柄が多かったですが、「プリンス・オブ・ペルシャ」といい、最近は肉体派なんですね。

ジェイク演じる、米軍エリートのスティーブンスは政府が遂行する極秘ミッションに任命され、爆破テロの犯人を見つける為にあらゆる行動をおこす。というのが基本的なストーリーですが、映画の序盤は、スティーブンスがどんな状況におかれているのか、観客はもちろんスティーブンスにも分からないという状況で進んでいきます。

居眠り(細かく言えば、居眠りではないけれど)から目覚めるとそこは列車の中で、目の前にいる女性が自分に親しげに話しかけてくる。けれど、自分はその人を知らない。しかも、その女性は自分の事をスティーブンスでは無く「ショーン」と呼びかけてくる。挙句の果てに、洗面台の鏡に映った顔は、自分とは異なる全くの別人で…。

これらのシーンのジェイクの焦りの演技は素晴らしく、観ているこちらまで焦燥感にかりたてられます。この謎の状況が徐々に明らかになっていくのが中盤までの流れで、映像にとても迫力がありますので作品にグっと惹き込まれました。

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中盤から後半は、列車の中に隠れている爆破テロの犯人探し。そもそも、スティーブンスは“8分間”しかその世界にはいられない。8分間という限られた時間の中で、爆弾を見つけ、犯人の手がかりを見つけ、テロを阻止するという事は、とても無謀な行動に感じられる。何度も何度も失敗して、爆破事故にあうスティーブンスはどんどん疲弊していく。

しかも、何度も“過去の世界”に8分間移動する度に、目の前にいる女性クリスティーナに親しみを抱いていく。自分と共に何度も何度も爆破して死んでしまうクリスティーナを何とか助けたいという感情が芽生えていくわけです。

極めつけは、テロ犯人を特定し追い詰めながらも、反撃に合い、クリスティーナと共に銃殺されてしまうシーン。ここは、ゲーム・アニメ「シュタイズゲート」を彷彿とさせる場面でした。完全なSFではないので、毛色は少し違うけどシュタゲファンにはささるポイントかも?

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スティーブンスは無事犯人を捕らえ、テロを阻止できるのか。そしてスティーブンス自身の運命は。「映画好きほど騙されるラスト」というキャッチコピーを見る限り、サスペンス的大ドンデン返しが期待できそうな作品ですが、結末は非常に爽やかでした。

秋は、サスペンスやミステリーを観たくなる季節(私だけ?)。女性にもオススメです!

食欲の秋にオススメの“おいしい”映画は?/「ジュリー&ジュリア」

ブログネタ
食欲の秋にオススメの“おいしい”映画は? に参加中!
現在開催中の「第2回東京ごはん映画祭」。映画を食の観点からピックアップする、コンセプトも素敵だし、ラインナップも傑作ぞろい!

結構観た物が多いのですが、日本発公開のペルーの食ドキュメンタリー『Cooking Up Dreams』と、大好きな小津作品の『秋刀魚の味』はスクリーンで観てみたいので、行く予定です。恵比寿だし。恵比寿に映画は絶対必要!そのへんは、渋谷を見習って欲しい。ガーデンシネマ閉館の悲しみはまだ癒えてないんだぜ。

というわけで、ブログテーマにも参加してみます。

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そもそも“おいしい映画”には傑作が多い。むしろ、“おいしくない映画”は面白くない事が多い。ホラー、サスペンス、SFはのぞいて、だけど。うまそうな食べ物シーンで絶対に避けて通れないのが、ジブリで、私はジブリにそんなに興味が無いので全部観てるわけではないのですが、食べ物シーンのやばさは殺人級ですよね。ディズニーよりジブリが優れてる、唯一の部分なのでは?とか勝手に思ってます。

その他、作品としてはつまらなかったけど「かもめ食堂」とかもご飯がすごく美味しそうだった。あと、ここ最近だと「ホノカアボーイ」と「のんちゃんのり弁」が良かった!映画としても、フードシーンも楽しめます。

と、ゴチャゴチャ挙げていますが、今私の気分的に一番のオススメは、2009年公開の「ジュリー&ジュリア」です。メリル・ストリープとエイミー・アダムス主演。

ジュリー&ジュリア [DVD]
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1949年、パリでフランス料理の虜となったアメリカ女性ジュリア。
彼女は名門ル・コルドン・ブルーで学ぶと、家庭で誰でも作れる524のレシピを本にまとめて出版する。
本はベストセラーとなり、彼女はテレビの料理番組に出演するなど一躍人気者となった。
それから50年後のニューヨーク。
小説家になる夢に破れた29歳のOLジュリーは、人生を変えるためにある無謀な計画を立てる。
それは、365日かけてジュリアが書いた524のレシピに挑戦し、その過程を毎日ブログに綴ることだった・・・。


50年前にフランス料理を学びレシピ本を出版したジュリア・チャイルドと、現代でジュリア・チャイルドのレシピ作りに挑戦し、その過程をブログに綴るジュリー・パウエルという2人の女性の物語が同時に進んでいくお話です。生きている時代も、環境も生活も全く異なる中、レシピ本とブログでそれぞれの自己表現をする2人。「女性向け」っぽく作っておきながら、全然女性向きじゃない映画が多い中、この作品は本当に女が観ると元気が出ます。

出てくるメニューも本当美味しそうで、フランス料理というと少しすましたイメージがあるけど、映画の中で丁寧に時間をかけて作られた料理たちは、家庭的でほかほか。DVD特典にはレシピ集がついているそうなので、超気になります。買おうかな。

料理してる時って、料理以外の事を考えないで没頭出来るからすごい気分転換になるし。夏とかはササーって作れるスピード料理が多かったけど、これからの季節はゆっくり時間をかけた煮込み料理でもしてみたいものです。

「ジュリー&ジュリア」、そんなにヒットしなくて、名女優が出ているわりに知らない人が多いのだけどオススメです。

監督失格

観た。

「監督失格」
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200本以上の作品に出演しながらも、2005年に34歳で急逝した女優・林由美香を題材としたドキュメンタリー。林の元恋人でドキュメンタリー「由美香」(1997)も手がけた平野勝之監督が、林とかかわった約15年間にわたる記録と、林の死後に新たに撮影した映像で構成した。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が実写映画初プロデュース。

半年くらい前から、TOHOシネマ六本木でガンガン予告やってて、「あれ…?ここシアターNとかポレポレ東中野じゃないよね?ヒルズだよね?」って戸惑ったものです。作品のタイプ的に。

林由美香さんって私にとって全然知らなかった存在で、2005年に亡くなった事も存じ上げてなかったのですが、2009年に松江監督の「あんにょん由美香」を観ていたこともあり、すでに試写を観た知り合い達の感想もかなり興味をそそるものだったので、「これは絶対観ねばならぬ」と思っていたんです。

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で、感想なのですが。感想をサラっと言える様な映画じゃないですねー。すごかった。エンドロール全て終わった後、ずしん。すぐに気持ちの切り替えが出来ない感じでした。人によって好みは相当に分かれる作品だとは思いますが、私的には今年のベスト5には入る映画でした。

1997年のドキュメンタリー「由美香」の映像を織り交ぜながら、実際に林由美香の遺体の第一発見者であった平野監督所有の映像を編集して作られた、この映画。純粋な「ドキュメンタリー」とも違う、でももちろんフィクションでは無いっていう、変わった作品です。生涯に一度しか産み出せない作品って、言葉で言うとちょっと安っぽいけど、こんなに観客が「監督の苦悩」が伝わってくる映画ってそうそう無いと思います。

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前半〜中盤にかけては、「由美香」の映像を振り返りつつ、監督自身が気持ちを整理していく様な作り。実際に「監督失格」を作りはじめるに至る過程なんかが展開されていきます。人って自分が思っているよりもエグい話が大好きで(私も含め)、「監督失格」の、監督と林由美香の言い争いとか、それこそ死とかのエグい部分にだけ期待していくと、もしかしたら肩透かしをくらうかもしれません。

けど私は、この「由美香」のパート、すごく楽しめました。林由美香の魅力がすごい。監督も若い…。結末を知っているからこそ、より2人の無邪気さや喧嘩がキラキラとまぶしく見える。ここがちょっとくだらなくて可笑しいからこそ、後半のたたみかけるような悲しみの展開は辛かったです。

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林由美香の母親であり「野方ホープ」の社長さん。この、お母さんのキャラクターがかなり良い。強い強いお母さん。彼女がAV女優ってことは知っていて、叱咤激励しながらも「早くいい人を見つけて結婚して欲しい」という。その普通の女の子、娘に対する願いがなんとも…。最後の方のお母さんの慟哭ぶりは、観ているこちらも相当にキツイのです。

AV女優と監督であった2人が恋人になり、別れ、その後も復縁するわけではないけど特別な存在で。それで、元カレが元カノの遺体の第一発見者って壮絶すぎる。けどそんな事が本当にあるのですから現実っていうのは本当にすごい。

そして「由美香」の中や、その他の映像に映し出されている彼女は素顔のままの彼女なのか、そういう所も考えはじめると切ないのです。矢野顕子の主題歌もすんばらしすぎた。あれ、グっとこないひといるのかな…。

ツリー・オブ・ライフ

結構前に観たのですが、感想遅れです。

「ツリー・オブ・ライフ」
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「天国の日々」「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリック監督が、ブラッド・ピット、ショーン・ペンを主演に描くファンタジードラマ。1950年代半ば、オブライエン夫妻は中央テキサスの田舎町で幸せな結婚生活を送っていた。しかし夫婦の長男ジャックは、信仰にあつく男が成功するためには「力」が必要だと説く厳格な父と、子どもたちに深い愛情を注ぐ優しい母との間で葛藤(かっとう)する日々を送っていた。やがて大人になって成功したジャックは、自分の人生や生き方の根源となった少年時代に思いをはせる……。

正直言って、ようわからん!
全くつまらなかったわけではないし、映像美に唸る箇所も多々ありましたが、私にとってはさほど印象に残る映画ではありませんでした。

同じ作品を観て、面白いという人も、つまらないという人もいるのが映画。それは言うまでもない当たり前の事なのですが、他の作品と違って、「ツリー・オブ・ライフ」に関しては「私はこの映画いまいちだったけど、きっとこういう部分が好きな人もいるんだろうなぁ」という予想も出来なかった。

これは、私が日本人だからなのか、宗教観の違いなのか。それとも、キリスト圏の人たちでも「なんか、この映画よわーわからんわ」っていう人がたくさんいるのか、ちょっとそこが気になりますね。

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良かった所がなかったわけじゃなくて、ブラピの演技は素晴らしかった。ブラピって誰もが認める素晴らしい俳優だし、存在感もスター性も兼ね備えたすごい人だと思うのですが、改めて彼の演技力について考える事なんて無かったので、再確認するきっかけになりました。

家族の事を誰よりも考える父でありながら、厳格で息子に疎まれていたり、“成功”に対してダーティな一面もある。そんな古きアメリカの父親像を見事に演じていたと思います。オイディプス王の神話だったか、「人は産まれながらにして母を愛し、父を憎む」みたいな話があったと思うのですが、まさにそんな話でした。

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「父、ブラット・ピット。息子、ショーン・ペン」っていうキャッチはすごく興味をそそられるし、うまいなーとは思ったのだけど、父子の確執と再生の物語だと思って観たら完全にケガする映画です。「落下の王国」的なロケーションや美しい自然の映像などは美しいのですが、個人的にはオススメしない作品っす。

しかも、なんとなく手放しに「つまんねー、この映画!」って言えない独特の雰囲気があるんだよなー。

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東京で働く28歳。ライターをしています。

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